かさ高性試験(ダウンパワー)

20年以上前は お客様から、かさ高 とはふとんの厚みですか?との質問が多くありました。

かさ高とは、羽毛の膨らみ度合い を数値化したもので「mm」で表記されます。

2012年 3月まで使用されていましたが、現在では 羽毛のかさ高性を示す指標として

ダウンパワー「cm3/g」表記が一般的となっています。

ダウンパワーとは 1gあたりの体積を表します。

 

☐ 試験方法

1. スチーム法で前処理をした羽毛 30gをステンレスシリンダー(内径 29cm)に入れます。    2. 荷重用円盤(94.3g)を乗せ負荷をかけます。                                  3. 2分後、試料の高さ(体積用スケール)を読み取ります。

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ダウンパワーの数値が高いほど、同じ羽毛の量でもふくらみが大きく高品質な羽毛といえます。

 

CIL ホームページでは 試験方法はもちろん、装置 や 前処理 についても詳しく紹介しています。

 

 

 

 

 

 

寝返りしやすさ測定2 荒川一成 (理事)

1.開発の経緯

先行研究として、人の寝返り動作は個人差による影響が大きく、かつ複雑なことから、客観的な寝返り難易度を測定できないかという考えで、水平方向への引張荷重に対する腰部加圧子の傾きの変化を寝返りしやすさの指標として検討しました(寝返りしやすさ測定1 参照)。

ところが、実際の寝返りには連続した動作が行われることから、本報では、安福氏、梶井氏らの研究1)を参考にして、加圧子を水平方向に引き戻し運動をさせる際に生じる加圧子の傾きの変位に着目し、任意の距離(変位)および速度で加圧子に傾きを伴う往復運動をさせました。その際に加圧子の傾きに要する張力を連続記録することによってウレタン素材の硬度と加圧子の転がり動作に要する変位張力の関係を検討しました。その結果、任意の変位L[㎜]に対する張力F[N]の関係は、硬度が大きくなるにつれて、いわゆる硬い試料ほど変位に要する張力が大きくなるという結果を得ました2)

単体のウレタン素材で得られた知見が、市販されている敷ふとんやマットレスにそのまま当てはまるのか、また実験に使用した試験器の検討を行うことにしました。

 

2.新しい測定器の開発について

腰部加圧子を用いた寝返り難易度測定器(試作)の概要を図に示します(図1)。腰部加圧子の直径は硬さ測定用加圧子(JIS K 6400-2)と同じ200[㎜]で下部の試料との接触面は凸200Rの曲面状となっており、重量は12.1[㎏]です。この加圧子は体重60[㎏]の人体腰部の沈み込みを想定しています。加圧子はリニアスライダーに固定されたロードセルにワイヤーで直結されており、リニアスライダーが任意の距離を往復運動することによって加圧子も往復運動します。その際、リニアスライダーの往復移動距離(変位)に対応してロードセルへの張力が連続記録されます。リニアスライダーの往復移動距離(変位)は加圧子の形状を考慮し、片道60[㎜]としました。なお、リニアスライダーの片道移動に要する時間は便宜的に5[sec]として10往復測定を行いました。試料とした敷ふとんは市販品を無作為に23枚選択しました。

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図1. 寝返り難易度測定機

 

3.結果

先行研究では、軟らかなウレタンフォームほど傾きに要する張力は小さくなったことから、沈み込みの実測値が大きい試料ほど軟らかいと評価し、沈み込み量と張力の関係を検討しました。その結果、両者間には相関は認められませんでした。しかし、試料毎に変位張力曲線を検討するとそれぞれ特徴がみられました(図1、図2)。先行研究で用いた単一素材のウレタンフォームと比較すると、製品としての敷きふとん(23枚)はそれぞれ側地の素材、中材、つめ物、充填率および重量が異なり、また表面がフラットな物とキルティングによる大きなうねりがある物など形状も様々であることから、本研究で用いた寝返り難易度測定器による変位張力曲線は製品としての個々の敷きふとんの特性(特徴)を示していると考えます(図3)。        なお、この研究は日本睡眠学会第27回学術大会(大阪)で報告しています。

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図2. 加重変異曲線の例       図3. 試料の硬度と加重変異曲線の傾き                            (ウレタン資料 KPA 215【N】)    (KPA 215【N】と OGA【N】の比較)

 

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図4. 変位張力曲線の比較                            (試料 1:ウール 100%、試料 2:テンセル 100%)

 

参考文献

  1. Masaru ABUKU, Morie MIYAZAWA, Hironobu KAJII, Niuniu Zhang:Measurements of Stress-Strain Relation to Evaluate Rolling Over in Bed, ICHES2011, pp.66-69, 2011.
  2. 荒川一成, 犬山義昭, 川田剛宏, 中島繁雄, 石井一友, 富澤順:マットレスの寝返り難易度測定器の開発(その2), 足利工業大学総合研究センター年報, Vol.18, p.80-84, 2017.

 

2024 春

今年も桜に逢えました。

桜が咲くと一気に華やかになり、気持ちもポジティブに引っ張ってくれる感覚があります。

短い期間だからより特別で 時間を大事に過ごしたくなります。

 

毎年、桜との写真を載せているCILですが 今年は菜の花と ♪

春の太陽で きらきらの川と、菜の花に癒されます。

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会社に咲いている桜!とってもきれいです!

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そして やっぱりスイーツも ♡

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また1年後、Happy な気持ちで春を迎えられるようにがんばりましょう ~ !

CILギャランティーラベル

CILギャランティーラベルとは

 

消費者が購入する際に 直接確認できないふとんの中材である羽毛 全ロットを事前に検査し、  確かな羽毛の品質を保証するためのラベルです。

年齢や体質と価格のバランスを考慮し 適切なものを選びやすくするため、CILでは羽毛そのものに10種類(バージン羽毛 7種類、リサイクル羽毛 3種類)のグレードを設けています。

 

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今回は CILラベルの特徴を3点に絞ってご紹介します。                        (ラベルについての過去ブログはこちら  →  ★2017.7.31 ★2017.11.30

 

CILラベル ポイント1.  検索機能

CILラベルには シリアルナンバーが割り振られており、CIL HP から検索いただくことで     充填されている羽毛原料の品質、合格認定日の特定が可能です。

 

CILラベル ポイント2. サンプリング立ち合い

羽毛原料入荷後 全ロット検査を実施します。その際 CIL検査員が必ず立ち合い         原料羽毛のロット番号、数量、商品名、及びサンプリング日を正確に記載の上、         検査室に持ち込みます。

 

CILラベル ポイント3. ラベルの管理

不正防止のため、余剰分のCILラベルは 回収・処分 としており、                    また、充填使用ロットに対するCILラベルの使用履歴をご報告いただき管理しています。

 

お客様が安心して羽毛ふとんを購入できるよう、CILでは サンプリングから検査、       ラベル発行後まで厳格に管理し、自信をもって行っています。

 

寝返りしやすさ測定 荒川一成(理事)

1.寝返りについて

人は一晩の睡眠中に20回から40回程度の寝返りをうっています。              睡眠研究においては体動と称され、筋電図法(EMM)により細体動(0.5秒未満の持続あるいは単一筋単位の収縮)と粗体動(0.5秒以上の持続や複数の筋の収縮をともなう)に分けて分析されています1)。睡眠中の寝返り(体動)の出現原因として、岡田氏らは寝床内温度を変化させ、寝返りと平均皮膚温および平均熱流量との関連を解析し、敷寝具表面温度の上昇に伴う皮膚温上昇を防御するためとしています2)

ここで扱う「寝返り」とは、健常人が寝具の中で体幹の向きに大きな変化を与えることに限定します。また、寝返りをうつという動作は、例えば仰臥位から側臥位へ というように概ね寝姿勢が変化したことを指し、角度をどのくらい変化させたかという厳密な定義はありません。

寝返りのしやすさについては 敷寝具の沈み込みや、シーツおよび掛け寝具とパジャマ間の摩擦等も関係しています。さらに寝返りのしやすさには敷き寝具の硬さも影響します。硬いマットレスと比較して、軟らかいマットレスほど沈み込みが増します3),4)(図1)。したがって、体幹の沈み込み具合が寝返りのしやすさにも影響すると考えられます。

このように寝返りは寝床の中で行われるため多くの要素が関係しますが、単純にマットレスの硬さによる違いを検討することを試みました。そこで、その傾向を確認するための寝返り難易度測定器を試作し、引張荷重に対する加圧子の傾きを評価することで寝返り難易度を検討しました。

%e4%bb%b0%e8%87%a5%e4%bd%8d-%e5%81%b4%e8%87%a5%e4%bd%8d                             図1. マットレスの硬さと沈み込み

 

2. 測定器の試作

腰部加圧子を用いた寝返り難易度測定器(試作)の概要を図に示します(図2)。腰部加圧子の直径は硬さ測定用加圧子(JIS K 6400-2)と同じ200㎜で 下部の試料との接触面は凸200Rの曲面状となっており、重量は12.1㎏です。この加圧子は体重60㎏の人体腰部の沈み込みを想定しています5),6)。試料となるウレタンフォームに載せた加圧子を水平方向に引っ張ることによって傾きを与え、その引張荷重に対する傾きを測定しました。引張荷重は、100g間隔で0gから1500gとし、硬度の異なるウレタンフォーム10種類について測定を行いました。測定の対象となった試料は10種類で いずれもアキレス製の軟質ウレタンフォームです(表1)。                           硬度は75(N)から280(N)で、この数値が小さいほど軟らかく、反対に大きい数値ほど硬いことを表しています。

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3. 結果と考察

試料となる10種類のウレタンフォームに載せた加圧子の引張荷重(0g~1500g)に対する傾きの散布図を示します(図3)。縦軸は加圧子の傾き、横軸は引張荷重となる錘の重量です。  各散布図に近似曲線を当てはめると、直線的な線形近似曲線が当てはまるものと、軟質ウレタンフォーム試験方法(JIS K 6400)の荷重-変異曲線に見られるような累乗近似曲線が当てはまるものがありました。このような違いは、それぞれのウレタンフォームの物性によるものと考えます。

結果として、硬度の数値が小さいウレタンフォーム、いわゆる軟らかいウレタンフォームほど錘の重量が増すにつれて加圧子の傾きが増加しました。また、錘の重量に対する各ウレタンフォームに載せた加圧子の傾きは、錘の重量が増すほど顕著に大きくなりました(図4)これらの結果は、軟らかなウレタンフォームほど傾き易い、すなわち寝返りしやすいことを意味しています。また、硬いマットレスを好む人も多いと思われますが、硬すぎると肩など身体の凸部を押し返す力が強いために、逆に動作が困難になる場合があります。したがって、硬いマットレスほど加圧子が傾くときに加圧子底部の曲面を強く押し返すことが考えられます。

ただし、今回の実験に用いた試料は 全て中・高反発の軟質ウレタンフォームです。低反発ウレタンフォームは軟らかく 粘性が高いため、身体がフォームに沈み込みやすくなります。また、圧縮たわみ試験(JIS K 6400-2 B法)から求められる高反発ウレタンフォームのヒステリシスロス率は25~35%程度であるのに対し、低反発ウレタンフォームでは50~70%程度です7)。そのため、ヒステリシスロス率の差が多少なりにも寝返りしやすさに影響するかもしれません。

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図3. 各試料における錘の引っ張り加重に対する加圧子の傾き

 

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図4. 引張荷重となる錘の重量に対するウレタンフォームの硬度と加圧子の傾き

 

参 考 文 献

  1. 白川修一郎:f.体動, 睡眠学ハンドブック日本睡眠学会編集, 朝倉書店, p.460-463,1994.
  2. 岡田モリエ, 永井慈子, 江角宣子:低温および中温環境下における寝床面温度が寝床気候および心理・生理相互におよぼす影響, 家政学研究, Vol.30, p.103-110, 1984.
  3. 荒川一成, 中島繁雄, 萬代宰, 小林敏孝:寝姿勢を考慮した寝装品の開発Ⅲ(3次元デジタイザによる寝具の沈み込み測定), 足利工業大学総合研究センター年報, Vol.4, p.151-154, 2003.
  4. 荒川一成, 大井隆志, 中島繁雄, 犬山義昭:マットレスの沈み込みと体圧分布, 足利工業大学総合研究センター年報, Vol.10, p.121-125, 2009.
  5. 荒川一成, 大井隆志, 犬山義昭, 中島繁雄, 鈴木公輔, 渡部俊亮:マットレスの沈み込みと体圧分布(Ⅱ), 足利工業大学総合研究センター年報, Vol.11, p.135-139, 2010.
  6. 荒川一成, 犬山義昭,大井隆志,中島繁雄, 鈴木公輔, 渡部俊亮:マットレスの沈み込みと体圧(-胸部加圧子と腰部加圧子の開発-), 足利工業大学総合研究センター年報, Vol.12, p.111-114, 2011.
  7. 日本ウレタン工業協会:もっと知りたいポリウレタン, 軟質ポリウレタンフォーム,

軟質ポリウレタンフォーム|日本ウレタン工業協会 (urethane-jp.org)

 

 

2024.1.31

冷えた空気に 星も凍てつくような寒夜がつづいております1月末、

羽毛への感謝が募ります。

 

明日からすでに2月、年明けからあっという間な気がしますが、

1月1日におきた地震や事故 心が痛む出来事を思うと、まだ1ヶ月とも感じます。

それぞれの状況や見ている景色によって時間の感じ方も変わることを実感しています。

自分の選択を大事に 1年が一瞬にならないように 。。

 

さてさて、今年も大宝八幡宮へ行き ご祈祷していただきましたので、

ご利益がありそうな写真を載せてみました。

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CILメンバーも皆さまも元気に1年過ごせますように!

 

 

保温性測定

過去に紹介したことのある 保温性 について、今回はさらに詳しくお知らせします。

★2017.6.9 保温性試験  ★2022.1.26 保温性測定

 

寝具の保温性について 1984年当時の通産省と業界団体、日本睡眠環境学会の産官学で

規格体系調査が全国規模で実施されました。

その中で消費者から 寝具の性能で最も要求が高かった項目が 「保温性」 でした。

そこで、ふとんの保温性を測定する方法を開発し JIS化 しています。(JIS L 1911)

 

保温性とは?

ふとんの 保温性 とは、別名「熱遮断能」といいます。

睡眠中も寝床内の温度(33℃前後)を維持する必要があり、

身体からの放熱を(ふとんの外へ逃げるのを)遮る性能を 保温性 といいます。

よく似た言葉に 熱伝導率 という言葉もあります。

表 の通り、数値が高いほど 熱伝導 が早いことを意味し、数値が低いほど遅くなります。

したがって、保温性 との関係は 逆相関(反比例)することになります。

最も 熱伝導率 が低いのは空気なので、空気層が多い ふとん の 保温性 が高いということです。

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保温性の目安は?

よく 保温性の数値はどれだけあれば良いのか を聞かれます。

一般的に寝具での保温性目安を 表 に示します。

組み合わせによって調整可能ですので、

ご使用の環境に合わせて調整いただくことが良いです。

CIL では室温と保温性の関係を研究しており、その計算式を所有しています。

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保温性の注意!

「保温性が何倍良い」と販促で謳われることがあります。

消費者は今までのふとんより暖かいと認識して購入されると思います。

このような表示をする場合、どのように測定したかの表示義務がありますが、

以前、「測定方法は JIS L 1096 で実施」との記載を目にしたことがあります。

JIS L 1096 とは、ミニふとんサンプルを使用する測定方法で、

ふとんの保温性を比較するのであれば、製品のまま測定を実施する必要があると考えます。

 

弊所では ふとんを製品の状態で測定可能です。

ぜひご利用お待ちしております。

ドレープ性測定

2021年 11月に「ドレープ性測定」を紹介しましたが、今回は詳細をお知らせします。

この ドレープ性測定 は弊所にて開発した方法で、                       試験方法は「科技振法」に詳細を記載しています。                      操作方法は以下の通りです。

  • ① 試料台の真中よりやや右側に距離測定器を仰向け状態に置く。
  • ② 表示版の電源を試験開始30分前にONする。
  • ③ 距離測定器の上に試料(掛けふとん等)を自然状態で掛ける。
  • ④ 距離測定器の腰部表示盤より距離を読み取る。
  • ⑤ 距離測定器を右方向に90度回転させ、固定する。
  • ⑥ 背中とふとんとの隙間距離を背部表示盤より読み取る。
  • ⑦ 距離測定器を左方向に90度回転させ、④と同様に距離を読み取る。

(科技振法から抜粋)

 

このようにして、仰向け寝から横向け寝に体位変換されたときに、                掛けふとんが身体に沿っている方が「ドレープ性」が良いことになります。           良いドレープ性を求めると、重さのある掛けふとんになるかと思われますが、           睡眠中の寝返りを抑制する研究報告もあります。                       従って、適度な軽さとドレープ性の良さが備わっていることが良いと思われます。

ドレープ性の測定は、英国(UK)に測定方法が確立しています。

使用治具:ドレープ性測定用30㎝φ×200㎝(ウレタン製円柱:英国規格 5335:1991 )       英国規格では、円柱に掛けふとんを掛けて、円柱中心部分からふとん端と床設置の距離を        32㎝以内であればドレープ性は良好としている。

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これを利用して「ベビーサイズ」の掛けふとんのドレープ性を実験的に行ったことがありますので紹介します。

ベビー用掛けふとんはサイズも小さく、ドレープ性測定用機器では測ることが出来ません。    そのため UK規格の方法を改良して行ったものです。

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評価方法                                              ふとん衿部分の体圧分布を測定し、この設置個数で評価。                  (ドレープ性:掛けふとんを掛けたときの衿部分の密着度合いと定義)

  • ■ドレープ性が良いとされる体圧分布例
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  • ■ドレープ性があまり良くない体圧分布例
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UK規格の治具(ドレープ性測定用30㎝φ×200㎝)は弊所でも所有しており、           評価用のご相談可能ですのでご活用お待ちしています。

体圧分布2 荒川一成(理事)

体圧分布について(その2)

寝具に横たわった時、寝具のどこに体重が多く加わっているのか?               その時、体重がうまく吸収されて分散できれば局所的に圧力が集中することが押さえられます。体圧がどのように分散されるのかによって身体部位に加わる圧の程度に大きく影響を及ぼし、また敷き寝具の硬さ感にも関係してきます。

人は睡眠中に20回以上も寝返りをうちながら寝ています。その寝姿勢を大別すると仰臥位(いわゆる仰向けの寝姿勢)、側臥位(肩を床につけた横向きの寝姿勢)、腹臥位(うつ伏せの寝姿勢)に分類されます。一般に敷き寝具に対する体圧分布を測定する場合、仰臥位(図1)と側臥位(図2)が多く用いられています。

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図1 仰臥位            図2 側臥位

 

体圧分布測定は、対象となる敷き寝具にどのように体重による圧がかかっているのかを評価すると同時に、身体が寝具から受ける圧力を測定することを目的として使用されます。

ここで、圧力分布測定装置FSA(タカノ株式会社)の例を挙げて説明します。          測定用センサマットには縦列と横列にそれぞれ32個ずつ(合計1034個)のピエゾ型圧電センサが配置されています。新計量法では圧力の値をパスカル(Pa)で表示しますが、血圧や体圧については水銀柱ミリメートル(㎜Hg)が用いられています。また、0(㎜Hg)から100(㎜Hg)の範囲を10(㎜Hg)幅で色分けし、白の領域から赤の領域に向かうほど圧が高くなっており、部位別体圧の強弱や体圧分散の状態が視覚的に分かるようになっています。

一般的に、どの寝姿勢においても、より多くの体重が加わる部位の圧が高くなるので、仰臥位では肩胛骨あたりの背中や臀部、側臥位では脇腹(肋骨)や腰骨あたりの圧が高くなります。敷き寝具の硬さが硬いものほど圧が集中する部位が目立ってきますが、かといって軟らかいウレタンフォームにすれば全てがよいというわけにもいきません。敷き寝具の体圧分布特性はそれ自体の硬さと使用者の体重や体型に大きく依存しています。

大学で行った実験例として、体重の異なる3名の被験者(表1)に対して硬さの異なる3種類の敷き寝具を使用した場合の体圧分布を以下に示します。尚、ここでは硬さの選択が容易なことからウレタンフォーム(表2)での比較としました。試料Ⅰが最も軟らかいウレタンフォームで、最も硬いウレタンフォームは試料Ⅲです。そして、それらの中間の硬さとなるのが試料Ⅱです。尚、3つの試料とも厚さは8㎝で いずれもプロファイル処理を施さない平ウレタン状態で比較をおこないました。

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図5、図6、図7にそれぞれ硬さの異なるウレタンフォームに対する体重の異なる被験者の体圧分布図を示しました。また、各試料に対する体の接触面積と体圧分散を見るためにセンサ接触数と平均体圧を(表3)に示しました。

試料Ⅰは、3種類の中で最も軟らかいウレタンフォームです。センサマットの総センサ数に対する接触数が他の試料より多く、全身に対する平均圧も低いために体圧がよく分散されていますが、体重が重い被験者ほど腰部の最高体圧値が高くなっています。この試料Ⅰは非常に軟らかく変形しやすい素材のため、体重の重い被験者ほど沈み込み量が増えて底付きに近い状態になっていることが考えられます。

試料Ⅲは、最も硬いウレタンフォームで体重の軽い被験者ほど局部的に体圧が多く加わっている部位が目立ちます。体重が軽いほどウレタンフォームに対する沈み込み量が少ないことから接触面積が増えず結果として平均圧が高くなってしまい、背中の肩胛骨付近や臀部、踵の体圧が高く出るようになります。

試料Ⅱのウレタンフォームは中間の硬さであるため、試料Ⅰと試料Ⅲの中間の特性を示す傾向がみられました。

以上の結果、体圧分布測定の結果だけで言えることは、被験者Aと被験者Bは 試料Ⅰと試料Ⅱのどちらを選択しても良く、最も体重の重い被験者Cは試料Ⅱと試料Ⅲのどちらかを選べば良いと思われます。

以上のように、敷き寝具の体圧分布特性は それ自体の硬さと使用者の体重や体型に大きく依存しますが、要点として体圧分布図において特に高い圧表示(赤で表示されている部分)がなく、背中と腰部がつながっていて 腰椎部位が浮いていない特性を示す寝具を選択すると良いでしょう。

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ふとんの耐久性試験

耐久性試験ついて 以前ブログで紹介しました。

2022年 11月: 羽毛の耐久性  ★2021年 9月: 耐久性試験機

今回は もう少し詳しく紹介します。

 

【羽毛ふとん】

羽毛ふとんの耐久性は、

2000年頃 ふとんの耐久性調査委員会(日本睡眠環境学会)で開発された

「ふとんの耐久性試験機(当研究所所持)」で評価しようとしていました。

しかし、羽毛ふとんは掛け寝具のため、使用している状況を再現するにあたり

耐久性試験機の負荷のかけ方(たたく)では 再現にならない との議論があり、

結果 羽毛ふとんは該当しないことになりました。

そこで、現在 羽毛ふとんの耐久性は、吹き出し試験で評価しています。

吹き出し試験は、羽毛ふとんの羽毛が生地から突き出す状態を調べます。

ドラム式の乾燥機に JIS で規定されている ゴム管 を入れて、一定時間負荷をかけます。

評価は、負荷を掛け 羽毛が外に飛び出した量で評価する方法と、

当研究所オリジナルの 一定の負荷を掛けた前後のかさ高で評価する方法があります。

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【ウレタンなど】

当研究所では実施していませんが、

ウレタン(寝具に使用するのは  軟質発砲ウレタン と言います)の耐久性試験は

「繰返し圧縮残留ひずみ試験(JIS Z 6400-4)」で行います。

よく「8万回圧縮試験合格」などと言われるのはこの試験のことです。

ただし この試験は製品試験ではなく、材料(ウレタンフォーム)の試験であり、

ふとんに入っているウレタンの性能を示しています。

 

【敷ふとん・枕】

敷ふとん・枕の耐久性試験は、

先に紹介しました「ふとんの耐久性試験機」で試験が可能です。

「ふとんの耐久性試験機」は製品を試験できる試験機で、

試験の際は 試験片(20×20㎝)に裁断していただき 試験を実施します。

ウレタンだけで作られた敷ふとんにも対応しています。

ウレタンの試験方法と異なる点は、20㎏のおもりを落とすことです。

(ウレタンの場合、一定の力で押す)

また、枕の場合は 製品の形状により方法が異なりますので、ご相談ください。

 

「ふとんの耐久性試験」については、試験機と実用調査の結果を論文としてまとめ、

横浜国立大学から研究発表されています。