体圧分布について(その2)
寝具に横たわった時、寝具のどこに体重が多く加わっているのか? その時、体重がうまく吸収されて分散できれば局所的に圧力が集中することが押さえられます。体圧がどのように分散されるのかによって身体部位に加わる圧の程度に大きく影響を及ぼし、また敷き寝具の硬さ感にも関係してきます。
人は睡眠中に20回以上も寝返りをうちながら寝ています。その寝姿勢を大別すると仰臥位(いわゆる仰向けの寝姿勢)、側臥位(肩を床につけた横向きの寝姿勢)、腹臥位(うつ伏せの寝姿勢)に分類されます。一般に敷き寝具に対する体圧分布を測定する場合、仰臥位(図1)と側臥位(図2)が多く用いられています。
図1 仰臥位 図2 側臥位
体圧分布測定は、対象となる敷き寝具にどのように体重による圧がかかっているのかを評価すると同時に、身体が寝具から受ける圧力を測定することを目的として使用されます。
ここで、圧力分布測定装置FSA(タカノ株式会社)の例を挙げて説明します。 測定用センサマットには縦列と横列にそれぞれ32個ずつ(合計1034個)のピエゾ型圧電センサが配置されています。新計量法では圧力の値をパスカル(Pa)で表示しますが、血圧や体圧については水銀柱ミリメートル(㎜Hg)が用いられています。また、0(㎜Hg)から100(㎜Hg)の範囲を10(㎜Hg)幅で色分けし、白の領域から赤の領域に向かうほど圧が高くなっており、部位別体圧の強弱や体圧分散の状態が視覚的に分かるようになっています。
一般的に、どの寝姿勢においても、より多くの体重が加わる部位の圧が高くなるので、仰臥位では肩胛骨あたりの背中や臀部、側臥位では脇腹(肋骨)や腰骨あたりの圧が高くなります。敷き寝具の硬さが硬いものほど圧が集中する部位が目立ってきますが、かといって軟らかいウレタンフォームにすれば全てがよいというわけにもいきません。敷き寝具の体圧分布特性はそれ自体の硬さと使用者の体重や体型に大きく依存しています。
大学で行った実験例として、体重の異なる3名の被験者(表1)に対して硬さの異なる3種類の敷き寝具を使用した場合の体圧分布を以下に示します。尚、ここでは硬さの選択が容易なことからウレタンフォーム(表2)での比較としました。試料Ⅰが最も軟らかいウレタンフォームで、最も硬いウレタンフォームは試料Ⅲです。そして、それらの中間の硬さとなるのが試料Ⅱです。尚、3つの試料とも厚さは8㎝で いずれもプロファイル処理を施さない平ウレタン状態で比較をおこないました。
図5、図6、図7にそれぞれ硬さの異なるウレタンフォームに対する体重の異なる被験者の体圧分布図を示しました。また、各試料に対する体の接触面積と体圧分散を見るためにセンサ接触数と平均体圧を(表3)に示しました。
試料Ⅰは、3種類の中で最も軟らかいウレタンフォームです。センサマットの総センサ数に対する接触数が他の試料より多く、全身に対する平均圧も低いために体圧がよく分散されていますが、体重が重い被験者ほど腰部の最高体圧値が高くなっています。この試料Ⅰは非常に軟らかく変形しやすい素材のため、体重の重い被験者ほど沈み込み量が増えて底付きに近い状態になっていることが考えられます。
試料Ⅲは、最も硬いウレタンフォームで体重の軽い被験者ほど局部的に体圧が多く加わっている部位が目立ちます。体重が軽いほどウレタンフォームに対する沈み込み量が少ないことから接触面積が増えず結果として平均圧が高くなってしまい、背中の肩胛骨付近や臀部、踵の体圧が高く出るようになります。
試料Ⅱのウレタンフォームは中間の硬さであるため、試料Ⅰと試料Ⅲの中間の特性を示す傾向がみられました。
以上の結果、体圧分布測定の結果だけで言えることは、被験者Aと被験者Bは 試料Ⅰと試料Ⅱのどちらを選択しても良く、最も体重の重い被験者Cは試料Ⅱと試料Ⅲのどちらかを選べば良いと思われます。
以上のように、敷き寝具の体圧分布特性は それ自体の硬さと使用者の体重や体型に大きく依存しますが、要点として体圧分布図において特に高い圧表示(赤で表示されている部分)がなく、背中と腰部がつながっていて 腰椎部位が浮いていない特性を示す寝具を選択すると良いでしょう。